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雨、体調不良、そして美しき連携(ナポレオン1815: 3人対戦)(1)

本稿は「BANZAIマガジン」第15号に掲載された鹿内靖氏のアフターアクション・レポートです。本作は2人で対戦しても面白いのですが、真骨頂はフランス vs イギリス&プロイセンをそれぞれ1人が受け持つ3人対戦。本日より3日間、3回に分けてお伝えいたします。(画像提供はDRAGOON氏)

意見交換できない指揮官たち

『ナポレオン1806』から始まったシリーズの3作目が、この『ナポレオン1815: ワーテルローの戦い』になる。扱う戦域が広く、キャンペーンレベルの作品となっていること、そしてナポレオン、ウェリントン、ブリュッヒャー、それぞれの立場になってプレイする3人戦も行えることが大きな特徴といえる。

単に3人のプレイヤーで戦うだけではない。対仏同盟のイギリス(英蘭連合)軍を指揮するウェリントン・プレイヤーと、プロイセン軍を指揮するブリュッヒャー・プレイヤーの間では、ルールでコミュニケーションが禁じられているのだ。

同盟軍が協力しなければならない状況でも、一旦敵を受け止めた方がいいのか、回避して退がるべきなのか、などの相談・アドバイスを行うことはできない。

それができるのは、ウェリントン・ブロック(ユニットにはブロックが使われる)とブリュッヒャー・ブロックが同一、あるいは道路で結ばれた隣接エリアに存在しているか、イベント“副官の働き”が有効なターンだけとなる。

ゲームを司るのは、移動も戦闘もイベントも、一貫してカードで処理される非常に洗練されたシステム。プレイを推進する移動や戦闘などのアクションは、フランス軍、対仏同盟軍の両サイドが交互に手番を持ち、1スタックずつ実行される。

そのターン、どちらのサイドが最初の手番を持つかも主導権フェイズにカードで決められる。自軍のデッキから、より大きな数字のカードを引いた方が先攻となる。同時・同様に、そのターンの対仏同盟軍リーダー・プレイヤーも決定される。

リーダー・プレイヤーは、対仏同盟軍サイドの手番が回ってくる度にイギリス軍、プロイセン軍のどちらが動くのかを決める。選択されなかった軍はなにもできない。

マップにはフランス国内のモブージュ、ボーモンから、北はブリュッセル、東はナミュール、西はアトといったあたりまでが収められており、軍の機動に於ける戦略的選択肢は幅広い。リーダー・プレイヤーは戦局全般を見渡し、ここではイギリス軍、プロイセン軍のどちらが動くべきなのか、相談なしに1人で決断しなければならない。

同盟軍間の連携に関する課題が、ワーテルローを扱う作品で、こうして表現されたことはあまりなかったように思う。そこで本作を紹介するにあたり、3人戦で行ったプレイの一例を示し参考に供したい。

フランス軍は筆者が担当。イギリス(英蘭連合)軍は“ナ道”川村氏。プロイセン軍は“地雷ゲーム処理班”DRAGOON氏に担当していただいた。シナリオは1815年6月14日から18日の5日間を扱い、ヒストリカルな配置で始まる“シナリオ4”を選んだ。戦場の霧と騎兵斥候を含む古参親衛隊ルールを使用。

『1806』から始まったシャコーのシリーズ。どの作品も「機動」に焦点が当てられているのが特徴で、『1815』はさらに3人対戦の面白さが加わった。なお『1806』と『1807』は連結してプレイすることもできる

歴史どおりは勝利に届かず

両氏とは、すでに何度か本作の対戦を行っている。また他で本作の対戦を見たこともある。だが、勝っているのはほとんどが対仏同盟軍。これまでのところ、フランス軍は歴史どおりに負けている。

フランス軍を担当すると、まずプロイセン軍の方を先に叩いて敗走させようと考える。これには実際にナポレオンがプロイセン軍から先に叩いているから、という史実に対するリスペクト(?)以外にも、いくつか理由がある。

1つはプロイセン軍が比較的フランス国境近くに配置されること。勝つための時間は10ターン(1ターン半日で5日間)しかない。プロイセン軍との早期決戦で圧倒すれば、最終的な勝利にたどり着けると考えるのは不自然ではない。

もう1つはプロイセン軍が攻撃型の軍隊で、防御型のそれではないこと。ブリュッヒャー・ブロックには攻撃に有利な能力はあるが、防御に有利な能力はない。戦闘時に使用できるカードでもイギリス軍と比べ、プロイセン軍には防御時に有利になるものが少ない。イギリス軍より叩きやすそうに見える。

セットアップでプロイセン軍は、国境近くに弱体なシュタインメッツの軍団、その後ろにやや強力なツィーテンの軍団を配置している。すぐにでも一撃できそうな位置にいるそれらに誘われるように、先を急ぐフランス軍プレイヤーは第1ターンに越境する。

フランス軍は、同盟軍の分断を図るためカトル・ブラ方面も指向し、イギリス軍を抑える必要がある。その上でナミュール、リニーの2つの目標間でプロイセン軍を攪乱、敵野戦軍の撃滅と重要拠点(VPエリア)確保を目指す、といったプランになる。

フランス軍が国境を越えると、同盟軍には移動の制約(それまでは2ユニットしか動かせない)が解除される。先を急ぐことで同盟軍の動きは活発になる。

そしてプロイセン軍主力はナミュール、すなわちマップ東端に配置されている。強力な増援のティールマンとビューロウの軍団も、ナミュールか、あるいはやはり東端のオトーモンに登場する。つまりプロイセン軍を指向して進撃すると、マップ東端に敵戦力を圧縮するかたちになるのである。

プロイセン軍は全力でナミュール〜リニーを守り、イギリス軍は全力でカトル・ブラ〜ニヴェルを守る。狭い範囲を守る同盟軍は厚くタイトに展開。2人の同盟軍指揮官プレイヤーの状況判断や連携も、さして難しいものではなくなる。

会戦は史実同様、また必然的にナミュール〜ニヴェルの中ほどに位置するカトル・ブラとリニー(いずれもVPエリア)で起こる。フランス軍は両方では勝てず、どちらかしか取れない。その勝利も、わずかな差でしかないだろう。残された時間で、それ以上の戦果を挙げるのは難しい。かくしてフランス軍プレイヤーは敗北を喫してきた。

(続く)

記事の最後にお得な情報も!? 18日の投稿をお楽しみに!!

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