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歴史的再現性と歴史的信憑性、そして『日本機動部隊』

『日本機動部隊』の英語版、『Task Force』がVUCA Simulationsから発売されてしばらく経ちますが、海外では様々なレビューが行われています。8月発売のBANZAIマガジン第18号では、その中でもブログRocky Mountain Navy Gamer様の記事を掲載させていただきました。

同記事には、『日本機動部隊』の歴史的再現性に関するTwitter上での議論も含まれています。その中でMaurice Suckling氏のこちらのツイートから、「歴史的再現性」にも「歴史的正確性」と「歴史的信憑性」があって、それは分けて考えるべきと指摘されています。

「歴史的正確性(historical accuracy)」とは、実際に起こったことがゲームの上で正しく再現されるかどうか、ということになるでしょう。一方の「歴史的信憑性(historical authenticity)」とは、歴史的に起こり得たことを納得のいく形でゲームに盛り込む、ということになるでしょうか。

記事の中で『日本機動部隊』における「歴史的正確性」上の問題について、『Kaigun: Strategy, Tactics, and Technology in the Imperial Japanese Navy, 1887-1941』(Naval Institute Press, 1997)を引き合いにして鋭く指摘されています。この中でDavid EvansとMark Peattieは日米の空母の設計思想・運用方法の違いについて議論しており、顕著な差があるにもかかわらず『日本機動部隊』では再現されていないというわけです──が、それがゲームを毀損しているかどうか、そしてより大事なことに「歴史的信憑性」が損なわれているか、ということとは別問題。「顕著な差」ではあるものの、「歴史的正確性」にこだわるあまり、プレイ困難なゲームになっては仕方がない。むしろ洗練されたシステムで、太平洋戦争初期の空母戦で「起こり得たこと」を描いた『日本機動部隊』の「歴史的信憑性」が高く評価されているのです。

今から35年前、まだ翔企画に勤めていた頃ですが、(お酒の入った)鈴木銀一郎さんが「『日本機動部隊』と『***』はねぇ、アメリカに持って行っても評価されると思っているだよね」と話していたのを覚えています(***のタイトルだけは思い出せません)。鈴木さんがこの海外レビューを読むことは叶いませんでしたが、読んでいれば「な、私の言ったとおりだろ」と笑いながら、新しいタバコに火を点けたんじゃないでしょうか。

「マンガでわかる〜」も『日本機動部隊』とコラボ。ちょっとした特集になりました。

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