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キャンペーン視点のクルスク(1)

本稿は「BANZAIマガジン」第12号に掲載された鹿内靖氏のレビューです。IED社より日本語版が発売されるとのことで、購入の参考にしていただければと思います。(画像提供はDRAGOON氏)

自軍の行動をプロットする

クルスクの戦いは、東部戦線に関するウォーゲームの中では比較的メジャーなテーマの1つになる。当然、それなりの数の作品が発表されている。しかし、それらはクルスクでの戦いそのもの、あるいは周辺のオリョール、ハリコフを含む範囲での戦いしか扱ってこなかった。

ところが今回発表された『バトル・フォー・クルスク』には、より広く北はヴェリキエルーキから南はタガンロークまで、東はヴォロニェシから西はキエフまで、ドイツ中央軍集団戦区から南方軍集団戦区までの範囲が含まれている。

扱う期間も1943年3月から11月上旬まで。つまり、43年の東部戦線キャンペーンという視点でクルスクが取り上げられているのである。

タイムスケールは、3月に相当するAターンから6月に相当するDターンまで(クルスク戦発生以前の4ターン)が1ターン約1カ月。続いてクルスクの戦いが始まった7月初旬を第1ターンとして1ターン約半月(1〜3週間)となり、11月上旬に相当する最終第8ターンまで、AからDを含め計12ターンある。

ユニット規模はドイツ軍が軍団、赤軍は軍。全てのユニットが2ステップを持つ。

システムは、かつてGDWから発表された『バトル・フォー・モスクワ』のそれに手を加えたものが使われており、メイアタックでスタック不可。最も大きな違いは両軍に態勢がある点だ。各ターンの最初に、両軍プレイヤーは自軍の態勢を相手に分からないように決定。それを同時に明かした後、ドイツ軍のプレイヤーターンから先に始められる。

プレイヤーターンのシークエンスは、補充フェイズ→機械化ユニット(装甲軍団、戦車軍、親衛軍)の移動および歩兵ユニットの鉄道移動フェイズ→戦闘フェイズ→全ユニット(装甲軍団、戦車軍、親衛軍も含む)の移動フェイズとなっている。

戦闘前にあるのは機械化移動と歩兵の鉄道移動だけ。歩兵が普通に移動できるのは戦闘の後になる。機械化戦力を集中投入しなければ攻勢は続かないのが分かる。

態勢は4種類ある。“休息”を選ぶと、そのターンは補充ステップを受け取るのみとなる。移動も戦闘もできない。ただし、余分に歩兵補充を(ドイツ軍ならプラス1ステップ、赤軍ならプラス2ステップ)受け取れる。

1ターンあたりの平均補充ステップ数は、ドイツ軍が歩兵1ステップ、機械化1.4ステップ。赤軍が歩兵3ステップ、機械化1.8ステップといったところ。“休息”による追加の歩兵補充は貴重なものになる。

“再配置”だと補充は普通に受け取り、全ユニットが1度だけ移動する。機械化移動や鉄道移動、戦闘はできない。

“展開”にすると機械化ステップを犠牲にしなければならない。ドイツ軍なら機械化1ステップ、赤軍なら機械化2ステップを除去することで戦闘以外全てができる。犠牲にするステップは、そのターンの補充から選んでもいいし、マップ上のユニットから選んでステップ・ロスさせてもいい。

“交戦”を選べば全ての活動が可能。ここでやっと攻撃が可能になる。ただし、ドイツ軍なら機械化と歩兵それぞれ1ステップずつの計2ステップ、赤軍ならそれぞれ2ステップずつの計4ステップを失わなければならない。

攻撃には大きな負担が伴う。ゲーム中ずっと攻勢状態でいることは、不可能に近い。どこかで休まねばならなくなる。シンプルだが非常に効果的、教育的な表現といえる。

これらを踏まえた上で全般的な戦局、相手プレイヤーの意図を考慮し、自軍の取る態勢を決定、つまり行動をプロットするのだ。


ドイツ中央軍集団戦区から南方軍集団戦区までの範囲がマップに含まれている
各ターンの最初に両軍プレイヤーは自軍の態勢を密かに決定する

(続く)

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