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弓張嶺夜襲作戦

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更新情報

2018年12月7日: 4.0/1の表現を改めました。また8.3/3を9.3/3同様の表現とし、9.6を明確化しています。


1.0 はじめに

『弓張嶺(きゅうちょうれい)夜襲作戦』は1904年8月26日、遼陽会戦における日本軍第二師団による夜襲作戦を再現するゲームです。プレイヤーの1人は日本軍(第二師団)を、もう1人はロシア軍(第9師団第1旅団を主力とするリヤビンキン支隊)を指揮します。

 

2.0 コンポーネント

『BANZAIまがじん』第4号の裏表紙を加工するか、ダウンロードしたファイルをプリントアウトして加工するなどしてマップとユニット(駒)を用意してください。

2.1 マップ: 6角形のマス目を「ヘクス」と呼びます。ユニットやターン記録トラックの一部がかかっているヘクスでも、4桁のヘクス番号が印刷されているのであればゲームに使用します。

  1. 高度: マップには3レベルの高度があります。色が濃くなるごとに高度が上がります。例えばヘクス1401は高度0、1501は高度1、1602は高度2です。高度は戦闘に影響します。
  2. 陣地: 赤い枠線の6角形はロシア軍の陣地です。勝利条件(4.0参照)と支配地域(6.0参照)、射撃(8.0参照)、白兵戦(9.0参照)に影響します。
  3. 集落と道路: 歴史的興味のためだけに存在します。ゲームには影響しません。
  4. ロシア軍初期配置ヘクス: 緑色の長方形(ヘクス1301の「IV/36」など)はロシア軍の初期配置ヘクスです。セットアップ時(3.0参照)に使用します。
  5. 日本軍旅団本部: 白色の正方形(ヘクス1902と1505)は日本軍の旅団本部の位置を表します。セットアップ(3.0参照)と勝利条件(4.0)に関係します。

2.2 ユニット: 日本軍(白地)には10個、ロシア軍(緑色地)には9個のユニットがあります。数値の意味は以下の通りです。

ロシア軍ユニットのうち、上端の色が濃いものは「予備部隊」であり、行動が制約されます。

2.3 マーカー: ユニットの他、以下のマーカーが必要になります。不要になった他のゲームの予備駒などを活用してください。

  1. ターン・マーカー: ゲーム・ターン記録トラック上に置き、ゲームの進行状況を表示します。
  2. 混乱マーカー: 混乱したユニットの上に置きます。複数必要になります。注意: ダウンロード・データのユニットは裏面が混乱した状態を表しています。混乱マーカーを置く代わりに、混乱したらユニットを裏返します。

2.4 サイコロ: 6面体サイコロ1個以上をご用意ください。

 

3.0 セットアップ

誰がどの軍を受け持つのかを決めたら、以下の順番でゲームの準備を行います。

  1. ロシア軍ユニット9個を部隊名が印刷されているヘクスに配置します。
  2. 日本軍ユニットを所属旅団ごとに分類します(第3旅団6個は第15旅団4個)。日本軍プレイヤーは各旅団本部から2ヘクス以内(距離を数える時、旅団本部が置かれているヘクスは数えず、配置するヘクスは数えます)にユニットを配置します。ただし、1ヘクスには1個しか置けません。ロシア軍ユニットの支配地域(6.0参照)に配置しても構いませんが、陣地に配置することはできません。
  3. ターン・マーカーをゲーム・ターン記録トラックの「1」に置きます。
  4. 混乱マーカーはマップ外に保管します。

 

4.0 勝利条件

ゲームは第8ゲーム・ターンが完了したら終了です。ゲームが終了した時点で陣地6ヘクスからロシア軍を「掃討」していれば日本軍の勝利、それ以外はロシア軍の勝利です。

  1. 陣地の保持と掃討: 以下いずれかの条件を満たせばロシア軍は陣地を保持していると見なします。(1)ロシア軍ユニットがそのヘクスにいる。または(2)ロシア軍ユニットの支配地域(6.0参照)が及んでいる。ただし(2)の場合、当該陣地ヘクスに日本軍ユニットがいれば、ロシア軍はその陣地を保持できません。ゲーム終了時にロシア軍が保持していない陣地ヘクスは日本軍によって「掃討」されています。
  2. ロシア軍のサドンデス勝利: ゲーム中いつでも、2つある日本軍旅団本部のどちらかのヘクスにロシア軍ユニットが進入すると、その時点で日本軍の攻勢は頓挫してゲームは終了します。

 

5.0 ゲーム・ターンの手順

ゲームは「ゲーム・ターン」を繰り返すことで進行します。1回のゲーム・ターンは2つの「プレイヤー・ターン」に分かれ、さらに「フェイズ」と呼ばれる手順に細分されます。1回のゲーム・ターン中に行う手順は以下のようになります。

日本軍プレイヤー・ターン

  1. 日本軍移動または射撃フェイズ
  2. 日本軍白兵戦または再編成フェイズ

ロシア軍プレイヤー・ターン

  1. ロシア軍移動または射撃フェイズ
  2. ロシア軍白兵戦または再編成フェイズ

5.1 ターンの終了: ロシア軍突撃フェイズが終了すると1回のゲーム・ターンが終わります。ターン・マーカーをゲーム・ターン記録トラックの次のマスに進めます。第8ゲーム・ターンが終わったのであれば、4.0に従って勝敗を決めます。

5.2 移動か射撃か: 自軍プレイヤー・ターンを行っているプレイヤー(フェイズ・プレイヤーと呼びます)は、最初のフェイズで移動フェイズを行うのか射撃フェイズを行うのか決めなければなりません。移動フェイズを行うのであれば全ての自軍ユニットは移動ルール(7.0参照)に従って移動可能ですが射撃は行えません。射撃フェイズを行うのであれば全ての自軍ユニットは射撃ルール(8.0参照)に従って射撃可能ですが移動は行えません。

5.3 白兵戦か再編成か: 5.2と同様に、次のフェイズでは白兵戦フェイズを行うのか再編成フェイズを行うのかを決めます。フェイズの選択は全軍を単位にするものであり、ユニットごとに決めることはできません。

 

6.0 支配地域(ZOC)

全てのユニットは隣接する6つのヘクスにZOCを及ぼします。ZOCは敵ユニットの移動と戦闘に影響します。自軍のZOCが自軍ユニットに影響することはありません。両軍のZOCが同じヘクスに及ぶこともあります。複数の自軍ユニットのZOCが同じヘクスに及んだとしても、ユニット1個だけのZOCとその効果に違いはありません。混乱状態のユニットもZOCを持ちます。

 重要: 両軍とも陣地にいないユニットは陣地に対してZOCは持ちません。陣地にいるユニットは隣接する全てのヘクスにZOCを持ちます。

6.1 移動への影響: 敵ユニットのZOC(EZOC)にいるユニットは移動できません(例外: 戦闘離脱、6.2参照)。移動中、EZOCに進入したユニットはそこで移動を終えなければなりません。

6.2 戦闘離脱: 夜間ターン(最初の3ゲーム・ターン)、移動開始時にEZOCにいるユニットはEZOC以外のヘクスへ移動することができます。夜明け後のターン(第4-8ゲーム・ターン)は、EZOCにいるユニットと同じヘクスに自軍ユニットが移動してくれば、元々そのヘクスにいたまだ移動していないユニットは移動できるようになります。ただしその場合でもこの移動中にEZOCに入ることはできません。EZOCからEZOCへ直接移動することはできませんし、一度EZOC以外のヘクスへ移動した後でも、再びEZOCに入ることはできません。

6.3 戦闘への影響: EZOCへは退却(9.4参照)できません。EZOC以外に退却できるヘクスがないユニットは壊滅します。混乱ユニットは自発的にEZOCに進入できません。既にEZOCにいる時はそこから離れる義務はありません。

 

7.0 移動

フェイズ・プレイヤーは最初のフェイズで移動フェイズを行うことにしたら、自軍ユニットを移動させることができます。

7.1 夜間ターンの移動: 最初の3ゲーム・ターンは夜間です。両軍とも1ヘクスだけ移動できます。ただしロシア軍の予備隊は夜間ターン中は移動できません(戦闘結果による退却を除く)。

7.2 夜明け後の移動: 第4ゲーム・ターン以降は両軍とも2ヘクス移動できます。

7.3 移動の制約: その他、移動には以下の制約があります。

  1. EZOCの影響: 6.1を参照してください。
  2. 自軍ユニットの影響: 1ヘクスには1個の自軍ユニットしか存在できません。この制約は夜間ターンであれば常時適用されます。よって自軍ユニットがいるため、移動できない、退却できないといった事態が発生します。夜明け後は各フェイズの終了時、各戦闘の終了時にこの制約が適用されます。移動中、一時的に自軍ユニットがいるヘクスに複数の自軍ユニットが存在しても構いません。
  3. 敵ユニットの影響: 敵ユニットがいるヘクスには進入できません。
  4. マップ外: マップ外へユニットを移動させることはできません。マップ外にしか退却できないユニットは壊滅します。
  5. 地形: 地形はユニットの移動に影響しません。
  6. 混乱ユニット: 混乱ユニットも移動できますが、自らEZOCに進入することはできません。移動開始時にEZOCにいる混乱ユニットは、そのまま留まっても、戦闘離脱(6.2参照)を行っても構いません。

 

8.0 射撃

フェイズ・プレイヤーは最初のフェイズで射撃フェイズを行うことにしたら、自軍ユニットを用いて隣接する敵ユニットに対して射撃を行えます。混乱状態のユニットでも低下した射撃力で射撃を行えます。

8.1 射撃の手順: フェイズ・プレイヤーは以下の手順で射撃を解決します。

  1. どの自軍ユニットで敵ユニットがいるどのヘクスを射撃目標にするかを決めます。1回の射撃で目標にできるのは1ヘクスだけです。複数の自軍ユニットで隣接する1ヘクスに対して共同で射撃を行えます。
  2. オッズを計算して射撃を解決します(8.3参照)。
  3. 射撃結果を適用します。

フェイズ・プレイヤーが他のユニットで射撃を行いたいのであれば、1の手順に戻ります。解決したい射撃を全て解決した、または射撃できるユニットがなくなれば射撃フェイズは終了します。

8.2 射撃の回数: フェイズ・プレイヤーの各ユニットは1回の射撃フェイズ中に1回だけ射撃できます。非フェイズ・プレイヤーの各ユニットは1回の射撃フェイズ中に1回だけ射撃を受けます。

8.3 射撃の解決: 射撃力と目標ヘクスの防御力でオッズを計算します。目標ヘクスの防御力は、そこにいる敵ユニットに関係なく、地形によって決まります。

  1. 基本になる防御力は1です。
  2. 目標ヘクスが射撃するユニットより高い高度の時は防御力に+1します。複数のユニットで射撃する時は、1個でも目標ヘクスと同じ高度にいればこの修整はありません。
  3. 目標ヘクスが陣地の時は防御力に+1します。この修整は2に重ねて適用します。
  4. 夜間ターンにロシア軍が射撃する時、日本軍の防御力に+1します。夜明け後はこの修整はありません。

射撃力合計を防御力で割って端数を切り捨てします。例えば射撃力4の日本軍ユニットがヘクス1604からヘクス1503にいるロシア軍ユニットを射撃する時は4:3(目標が高い高度)となり、オッズは「1」です。フェイズ・プレイヤーはサイコロを1個振り、オッズ以下の目が出れば目標ヘクスにいる敵ユニットを混乱させます。混乱マーカーを置いてください。出た目がオッズを上回った時は効果はありません。またオッズが1未満の時は自動的に射撃は無効になります。既に混乱している目標が混乱した時は退却(9.4参照)します。

 

9.0 白兵戦

フェイズ・プレイヤーは2番目のフェイズで白兵戦フェイズを行うことにしたら、自軍ユニットを用いて隣接する敵ユニットに対して白兵戦を行えます。混乱状態のユニットでも低下した白兵戦力で白兵戦を行えます。

9.1 白兵戦の手順: フェイズ・プレイヤーは以下の手順で白兵戦を解決します。

  1. どの自軍ユニットで敵ユニットがいるどのヘクスを白兵戦の目標にするかを決めます。1回の白兵戦で目標にできるのは1ヘクスだけです。複数の自軍ユニットで隣接する1ヘクスに対して共同で白兵戦を行えます。
  2. オッズを計算して白兵戦を解決します(9.3参照)。
  3. 白兵戦の結果を適用します。

フェイズ・プレイヤーが他のユニットで白兵戦を行いたいのであれば、再び1に戻ります。解決したい白兵戦を全て解決した、または白兵戦できるユニットがなくなれば白兵戦フェイズは終了します。

9.2 白兵戦の回数: フェイズ・プレイヤー(攻撃側)の各ユニットは1回の白兵戦フェイズ中に1回だけ白兵戦を行えます。非フェイズ・プレイヤー(防御側)の各ユニットは1回の白兵戦フェイズ中に複数回の白兵戦を受けることがあります。

9.3 白兵戦の解決: 攻撃側ユニットと防御側ユニットの白兵戦力でオッズを計算します。白兵戦力は以下の修整を受けます。

  1. 防御側ユニットが攻撃側ユニットと同じ高度、または低い高度の時、修整はありません。
  2. 防御側ユニットが攻撃側ユニットより高い高度の時、防御側ユニットの白兵戦力に+1します。
  3. 防御側ユニットが陣地にいる時、防御側ユニットの白兵戦力に+1します。この修整は2に重ねて適用します。

攻撃側白兵戦力を防御白兵戦力で割って端数を切り捨てします。例えば白兵戦力4の日本軍ユニットがヘクス1604からヘクス1503にいるロシア軍ユニット(混乱状態)に対して白兵戦を行う時は4:2+1+1(混乱しているので白兵戦力2+防御側が高度が高い+陣地)となり、オッズは「1」です。フェイズ・プレイヤーはサイコロを1個振り、オッズ未満の目が出れば目標ヘクスにいる敵ユニットを壊滅させます。ユニットをゲームから取り除きます。オッズと同じ目が出た時は退却させます(9.4参照)。オッズが1未満の時は自動的に白兵戦は無効になります。

9.4 退却: 退却は防御側が行います。退却させられた防御側ユニットを1ヘクス好きな方向へ移動させます。ただし、以下のヘクスには退却できません。

  1. 敵ユニットがいるヘクス
  2. EZOC(ただし夜明け後なら自軍ユニットがいるEZOCに退却可能)
  3. マップ外
  4. 自軍ユニットがいるヘクス(ただし夜明け後なら自軍ユニットがいるヘクスを通過して退却可能)

夜明け後であれば、他に退却できるヘクスがない時に限り自軍ユニットがいるヘクスに退却させることができますが、そのヘクスで退却を終えることはできません。他の自軍ユニットがいない退却可能なヘクスに達するまで退却を続けます。複数の退却可能ヘクスがある時、最短距離のヘクスへ退却させなければなりません。退却できないユニットは壊滅し、マップから除去されます。

例: 9.3の例で、日本軍プレイヤーは「1」を出しました。ロシア軍プレイヤーはロシア軍ユニットをヘクス1502、1403、1404(陣地なのでZOCが及ばない)のいずれかへ退却させます。

9.5 戦闘後前進: 防御側ユニットが除去された、または退却させられた時、攻撃側ユニット1個はそのヘクスへ前進できます。この時はEZOCの影響は無視します。

9.6 疲労: 戦闘結果を適用し、防御側の退却と戦闘後前進を行った後、以下の方法で白兵戦に参加した両軍の疲労をチェックします。

  1. その白兵戦を解決したオッズが1以上だった時は、その白兵戦に参加した両軍の全てのユニットに混乱マーカーを置きます。既に混乱マーカーが置かれているユニットは1ヘクス退却しなければなりません。この時、防御側、攻撃側の順番で退却を行います。退却は退却ルール(9.4参照)に従いますが、攻撃側ユニットは攻撃側プレイヤーによって退却させます。白兵戦の結果により退却させられていた混乱している防御側ユニットは、疲労のためにさらに1ヘクス退却することになります。
  2. その白兵戦を解決したオッズが1未満だった時は、その白兵戦に参加した攻撃側だけの全てのユニットに混乱マーカーを置きます。既に混乱マーカーが置かれているユニットは1ヘクス退却しなければなりません。退却は退却ルール(9.4参照)に従いますが、攻撃側ユニットは攻撃側プレイヤーによって退却させます。
  3. 混乱したユニットだけで白兵戦を行った場合、上記ルールにより、戦闘後前進をしたヘクスから退却しなければならなくなることに注意してください。

 

10.0 再編成

フェイズ・プレイヤーは2番目のフェイズで再編成フェイズを行うことにしたら、EZOCにいない全ての自軍ユニットから混乱マーカーを取り除くことができます。

重要: 夜間ターン中は再編成を選ぶことができません。

混乱しているユニットは射撃力、白兵戦力ともに半分になります。端数は切り捨てします。

 


 

主要参考文献

『戦闘戦史 最前線の戦術と指揮官の決断』樋口隆晴/作品社