1.0 はじめに
このゲームはバルジの戦いにおけるパイパー戦闘団の突破をテーマにしたソリティア・ゲームです。プレイヤーはパイパー戦闘団を編成し、12月20日PMまでにムーズ川への突破を目指します。しかし史実同様、米軍の抵抗(主に工兵)と燃料不足が大きな障害となるでしょう。
ヒストリカル・ノート: ラ・グルエーズ(リンク先はラ・グルエーズにある「December 44戦争博物館」公式サイト)でパイパーが完全に包囲されたのは22日ですが、19日には西から第82空挺師団が、20日には北から第3機甲師団が反撃を開始しており、それ以上の前進は不可能でした。トロワ・ポンのどこかで渡河できていれば、19日中にムーズ川に到達できたとパイパーは米兵捕虜に語っていますから、それプラス1日をゲームにおけるタイム・リミットに設定しました。
2.0 コンポーネント
駒10個を切り離して使用する、またはコピーするなどして自作してください。この他、6面体ダイス10個以上(1辺のサイズが10ミリ以下のもの)とターン・マーカー、マグカップなどの容器1つを用意してください。
2.1 マップ
マップにはパイパー戦闘団が所属する第1SS装甲師団と第12SS装甲師団に割り当てられた進路(ロールバーン)と町が記されています。ロールバーンは北から順にA, B, C, Dとなり、第12SS装甲師団にはロールバーンAとBが、第1SS装甲師団にはCとDが割り当てられました。ゲーム上、ロールバーンAは使用できません。Bは第12SS装甲師団の進路ですが、史実でもパイパー戦闘団が通過したので使用可能です。
建物のアイコンが記された場所は町を表します(デザイン上、2種類ありますがどちらも同じ町として扱います)。数値は脅威判定(5.0④)で用いる脅威値(ドイツ軍にとっての脅威値=米軍部隊による妨害が発生する可能性)です。
マップの左はターン記録トラックで、ゲームの進行状況を記録します。ターン・マーカーを置いて現在のターンを表示してください。
左下はパイパー戦闘団の編成を表します。兵科記号の意味は次のとおりです。
- 上段(主力部隊): 装甲|装甲擲弾兵
- 下段(支援部隊): 重装甲|砲兵|偵察|工兵|対空砲|補給
2.2 駒
パイパー戦闘団(黒色)を除く全ての駒は米軍部隊を表します。歩兵と戦車は2〜4の戦闘力(大きな数字)を持ちます(6.1)。工兵の兵科記号が記された駒は工兵です(6.2)。飛行機のシルエットは米軍機による阻止攻撃を表します(6.3)。ジェリカンのシルエットと対戦車砲の兵科記号が記された駒は、使用される時期によって影響が異なります。ルール6.4を参照してください。
3.0 ゲームの準備
米軍駒9個全てをカップに入れます。パイパー戦闘団(Kampfgruppe Peiper)駒をロースハイムに置きます。
マップ左下はパイパー戦闘団の「戦闘序列」です。戦闘序列は2段に分かれており、上段は主力部隊、下段は支援部隊です。右下は補給量を表します。ゲーム開始時の補給量は6ポイントで、ダイス1個を6の目を上にしてボックス内に置きます。
プレイヤーは10ポイントを主力部隊と支援部隊に割り振ります。主力部隊には装甲と装甲擲弾兵、支援部隊には重装甲、自走砲、偵察、工兵、対空砲があります。主力部隊にはそれぞれ上限6ポイント、支援部隊にはそれぞれ上限3ポイントまで割り振れます。割り振ったポイントを表示するため、各ボックスにダイスを置いてください。
選択ルール: 10ポイントで厳しいと感じた場合は12ポイントで開始してください。
4.0 勝利条件
プレイヤーはパイパー戦闘団(以下、KGP)を率いてムーズ川を目指します。12月20日PM(第9ターン)までにKGPがユイ、オンブレ、アンジのいずれかに進入すればその時点で勝利、それ以外は敗北です。
選択ルール: 史実ではKGPはラ・グルエーズで包囲され、重装備を放棄して撤退しました。よって値4以上の町に進入すれば「引き分け(史実よりも善戦)」とします。
5.0 ターンの手順
このゲームは「ターン」を繰り返すことで進行します。各ターンの手順は以下のとおりです。
- 米軍部隊の配置: KGPがいる町に対し、北・西・南に隣接する各町に、カップからランダムに引いた米軍駒を1つずつ裏返しで配置します。第1ターンはビューリンゲンかマンダーフェルトへ移動する可能性があるので、ランダムに1つずつそれらの町に配置します。
- 偵察: プレイヤーが望めば、偵察ポイントを使って裏返しの米軍駒を表面にできます。1ポイントを使うごとに米軍駒1つを表にできます。使用した偵察ポイントは失われます。
- パイパー戦闘団の移動: KGPを隣接する町へ向けて移動し、直ちに燃料1ポイントを消費します。この時点ではKGPを町に通じる道路上に置きます。
- 重要: KGPは西または南北どちらかにしか移動できません。
- 脅威判定: ダイスを2個振り、移動先の町に記されている脅威値(星内に記されている赤い数値)と比べます。
- 脅威値以下の目が出るごとに、その町に米軍駒1個が出現します。1個しか出現しなければ、手順1で配置した米軍駒を(偵察していなければ)表面にします。2個出現すれば、手順1で配置した米軍駒を表面にして、さらにカップから1個を引き、表面にしてその町に置きます。
- ダイス2個とも脅威値を上回る目なら、その町に米軍部隊は存在しません。手順1で配置した米軍駒を表面を見ずに直ちにカップに戻します。KGPを目的地の町へ進めます。
- 上記の結果と関係なく、ダイス目2個が同じ目だったらランダム・イベントが発生します。直ちにランダム・イベントを解決します(7.0)。
- 戦闘/2回目の移動: 脅威判定の結果、移動先の町に米軍部隊がいれば戦闘を解決します(6.0)。米軍部隊がいなければ、直ちに2回目の移動を任意で行えます。この時、手順3及び4に従いますが、移動先には米軍駒が配置されていないことに注意。米軍駒が2個出現することになったら、カップから2個を引かなければなりません。
- 例外: 2回目の移動では燃料を消費しません。
- ターン終了: 以下のことを行います。
- マップ上の全ての米軍駒をカップに戻します(例外: 橋を爆破した工兵。また、KGPが今いる町から北・西・南に隣接している町に置かれている米軍駒もカップに戻しません)。ターン・トラック上の米軍駒をカップに戻します。
- プレイヤーの任意で「守備隊の残置」を行えます(部隊の一部を後方に残し、燃料消費を抑制します)。主力部隊または重戦車を1ポイント取り除くごとに燃料1ポイントを増やせます。
- プレイヤーの任意で支援部隊を装甲擲弾兵に変換できます。支援部隊(どのタイプでも)2ポイントを取り除いて装甲擲弾兵1ポイントに変更します。
- ターン・マーカーを次のマスに進めて新たなターンを開始します。12月20日PMが終了するとゲームは終了します。
6.0 戦闘
米軍駒が存在する町に進入しようとするKGPは、その米軍駒と戦闘を行わなければなりません。戦闘の方法は米軍駒の種類と数によって異なります。
6.1 戦車または歩兵だけ(あるいは戦車と歩兵)が存在する場合
戦車・歩兵駒に記された数値はその部隊の戦闘力です。プレイヤーは1ポイント以上を持つ主力部隊の種類と同数のダイスを振ります(装甲と装甲擲弾兵で最大2個)。出た目の合計が米軍駒の戦闘力合計を上回れば勝利です。撃破された米軍駒はターン・トラックの次のターンを示すマスに置きます。
出た目の合計が米軍駒の戦闘力合計と同じなら振り直します。
出た目の合計が米軍駒の戦闘力合計未満ならKGPは撃退されます。主力部隊のどちらかが1ポイントを失い、移動元の町に戻ってターン終了手順に進みます。
- 戦闘結果に関係なく、主力部隊が振ったダイスで「1」が出るごとに、主力部隊どちらかが直ちに1ポイントを失います。支援部隊が振ったダイスで「1」が出ても罰則はありません(下記参照)。
- プレイヤーは砲兵1ポイントを消費して、振るダイスの数を1個増やせます(1回の戦闘で消費できるのは1ポイントのみ)。
- 重装甲に1ポイント以上あれば、振るダイスの数を1個増やせます。ただし、直ちに燃料1ポイントを消費します。
- 米軍の諸兵科連合: 町に米軍駒が2個存在し、それが戦車と歩兵(または空挺兵)なら、米軍戦闘力合計を2倍にします。
例: 第1ターンにKGPがロースハイムからマンダーフェルトへ移動しました。ダイスを2個振ったところ出た目は1と6でした──マンダーフェルトに配置していた米軍駒を表面にします。歩兵(119/30、戦闘力2)でした。KGPは装甲2ポイントと装甲擲弾兵3ポイントを有しているのでダイスを2個振ります。出た目は運悪く「1, 1」でした。プレイヤーは装甲擲弾兵を2ポイント取り除くことにして、再度ダイスを2個振ります。今度の出た目は「2, 3」で、戦闘力2を上回りました。歩兵をターン・トラックの第2ターンのマスに置きます。
重要: 主力部隊が0ポイントになるとKGPは戦闘能力を失います。直ちにプレイヤーの敗北でゲームは終了します。
全力攻撃: 装甲と装甲擲弾兵が各1ポイントずつ以上、両方の合計が3ポイント以上ある時、「全力攻撃」を行えます。その場合ダイスを3個振り、出た目の合計を使用できます。ただしダイスを3個振るので「1」が出る確率も上がります。
選択ルール: KGPがムーズ川まで楽に突破できてしまう場合は戦闘解決ルールを以下のように変更してください: パイパーが振るダイスの数は変わりませんが、ダイス目は合計せず、そのうち最も大きい目1つだけを使用します。その目が米軍駒の戦闘力を上回れば勝利、下回れば敗北です。同数なら再度戦闘を解決します。米軍駒が2個登場する場合、諸兵科連合効果が適用される場合は米軍駒は戦闘力5を持つ1個として戦闘を解決します。諸兵科連合効果が適用されない場合(歩兵同士、空挺同士、または歩兵と空挺)、KGPは米軍駒1個ずつと戦闘を行います。順番はプレイヤーの任意です。2個ともに勝てば勝利、1個でも負けるば敗北で元いた町に戻ります。
例: 上の例と同じ状況なら、KGPはダイスを2個振り、出た目のより大きなほうと米軍駒の戦闘力(2)を比較します。出た目が1, 1ならKGPは3ポイントを失って敗北。2, 1なら1ポイントを失って振り直し。3, 2ならKGPは勝利します。
6.2 工兵が存在する場合
移動先の町に工兵が存在する場合、最初に以下のように処理します。なお2個とも工兵だった場合、直ちに1個をカップに戻します。
- 橋を渡って町へ移動する: 米軍工兵により橋が爆破されます。これを回避するためには、直ちに工兵2ポイントを消費しなければなりません。消費しない、またはできない場合、米軍工兵駒を橋の上に置き、以後ゲームが終了するまでこのルートを通過できないことを示します。工兵ポイントを消費すれば破壊された橋を修理し、通過できます。米軍工兵駒は直ちにカップに戻します。
- 橋を渡らず町へ移動する: 米軍工兵により道路封鎖(ロードブロック)が行われます。プレイヤーは以下いずれか1つを選択しなければなりません。
- 工兵で対応する: 工兵1ポイントを消費して町へ移動します。米軍工兵駒は直ちにカップに戻します。
- 迂回する: ロードブロックを迂回するルートを探します。このターン中は町へ移動できない代わりに、燃料を消費しません(消費した1ポイントが返ってきます)。米軍工兵駒をカップに戻し、ターン終了手順に進みます。
- 強行突破する: ダイスを1個振ります。1-4なら装甲1ポイント、5-6なら装甲擲弾兵1ポイントを失って町へ移動します。米軍工兵駒は直ちにカップに戻します。指定の戦力ポイントがない場合、任意の部隊が1ポイントを失います。
移動先の町に工兵とそれ以外の駒が存在する場合、まず上記手順を行い、KGPが町へ移動すれば残りの駒との戦闘を解決します。KGPが町へ移動しなければ、残りの駒は直ちにカップに戻します。
6.3 米軍機が存在する場合
移動先の町に米軍機が存在する場合、KGPは米軍機の攻撃にさらされます。米軍機と戦車/歩兵が存在する場合、先に米軍機の攻撃を解決します。
- プレイヤーは対空砲1ポイントを消費することで米軍機の攻撃を回避できます。米軍機駒をターン・トラックの次のターンのマスに置きます。
- 回避しなかった/できなかった場合、ダイスを1個振ります。
- 1: 装甲 2: 装甲擲弾兵 3: 重装甲 4: 砲兵 5: 偵察 6: 工兵
- 出た目の部隊が1ポイントを失います。その部隊にポイントが残っていなければ補給1ポイントを失います。補給ポイントが残っていない場合、任意の部隊が1ポイントを失います。
- 攻撃後、米軍機駒をカップに戻します。
ヒストリカル・ノート: 天候が回復する前から、米軍機による阻止攻撃が行われていました(『バルジの戦い』では、悪天候であっても航空阻止を行えます)。
6.4 燃料/対戦車砲が存在する場合
移動先の町に燃料/対戦車砲が存在する場合、以下のように処理します。燃料/対戦車砲と戦車/歩兵が存在する場合、先に燃料/対戦車砲の処理を行います。
第1-5ターン: KGPが進入しようとした町の星が黄色なら、燃料集積所(道路沿いに並べられたジェリカン)を発見します。直ちにダイスを1個振り、出た目と同数の燃料ポイントを受け取ります。6を超える燃料ポイントは失われます。燃料/対戦車砲駒をゲームから取り除きます。町の星が白色なら何も起こりません。燃料/対戦車砲駒を直ちにカップに戻します。
ヒストリカル・ノート: 燃料集積所はスタヴロにあり、KGPはあと数kmの場所まで迫っていましたが、その存在に気づきませんでした。ゲームでは各ルートに1カ所ずつ燃料集積所が存在する可能性を与えています。ドイツ軍に奪われてはならないと連合軍は直ちに焼却を命じ、一部が燃やされましたが、大半は別の場所へ運ばれました。
第6ターン以降: この町に進入しようとしたKGPは対戦車砲の待ち伏せに遭い、直ちに装甲または重装甲1ポイントを失います。燃料/対戦車砲駒をゲームから取り除きます。
ヒストリカル・ノート: 米軍はロードブロックを利用して対戦車砲よる待ち伏せを行いました。57ミリ対戦車砲でケーニヒスティーガーを戦闘不能(砲身を破壊)した例もあります。
7.0 ランダム・イベント
脅威判定のダイス目が2個とも同じだった場合、ランダム・イベントが発生します。ダイス目(1個の目)に現在のターン数を加えた値でランダム・イベントを決めます。
例: 第1ターンの脅威判定のダイス目が2のぞろ目だった場合、「2+1」でイベント「グライフ作戦」が発生します。
2-3 グライフ作戦
特殊部隊による作戦が奏功します。次のターンに進入する町の脅威値が1小さくなります(最低でも1)。
ヒストリカル・ノート: KGPの進路上にあった橋に爆薬が仕掛けられていましたが、グライフ作戦に投入された特殊部隊により爆破を免れた例があります。
4-5 降下猟兵
降下猟兵がKGPに合流します。装甲擲弾兵に1ポイント追加します。
6-8 米軍部隊の再編成
ターン・トラック上の全ての米軍駒を直ちにカップに戻します。
9-11 後方からの補給
ダイスを1個振り、出た目の半分(端数切り捨て)と同数の燃料ポイントを受け取ります。
ヒストリカル・ノート: 孤立したKGPに補給物資を空中投下する、川の上流から燃料が半分入ったジェリカンを流す、といった涙ぐましい努力が行われましたが、いずれも実を結びませんでした。
12+ 米軍部隊の反撃
直ちにKGPを1つ東の町へ移動させます。これは、KGPは東へ移動できないというルールの例外です。またこの移動で燃料は消費しません。ラ・グルエーズにいて東へ移動できない場合、完全に包囲されたものとして史実どおりKGPは壊滅。プレイヤーの敗北でゲームは終了します。
参考文献:
- Blumberg, Arnold. A Wave of Terror: Kampfgruppe Peiper in the Battle of the Bulge. Command Magazine, 1997.
- Parker, Danny S. Battle of the Bulge: Hitler’s Ardennes Offensive, 1944-1945. Conshohocken, PA: Combined Books, 1991.
- Morimoto, Makoto. アルデンヌの戦い~パイパー戦闘団進撃ルート~, 戦跡散歩