別冊&フォリオ> 金門島上陸作戦> 中国が来る: 人民解放軍三大上陸作戦

台南方面に反撃に向かった台湾軍の機動打撃群。移動力を活かして人民解放軍ヘリボーン旅団の背後に回り込むも、後に戦車師団の猛攻を受けて潰滅した。
本作がデザインされたのはトランプ大統領(編註: 第1期)が台湾にエイブラムス戦車の売却を容認する前だったので、今ならレーティングが変更されるかも?
201X年、高雄
D+2日
香港の民主化デモを武力で鎮圧することを密かに決めた中国共産党は、その影響が飛び火する前に、同時に台湾に侵攻することを決断した。この水陸両用作戦は南京軍区が行う。指揮するのは倉元(フォツァン・ユァン)上将である。
「タイ・ボンバのゲームでこんなに長考したらいけませんよね」と恐縮しつつも、倉上将は上陸地点を的確に定める。高雄である。
IDWの勝利条件は、最終第7ターン終了時に都市ヘクスを8つ以上支配していれば中国軍が勝利する。都市ヘクスが集中しているのは台北周辺だが、当然、台湾側も守りを固めている。都市の防御効果も大きい。それに市街戦は必ず両軍に損害が発生するので、何かと厄介なのである。
高雄と、すぐ北にある台南で都市ヘクスは7つ。あと1ヘクス支配すれば勝利条件を達成できる。
海岸には水陸両用師団が殺到し、都市の背後にはヘリボーン部隊が突入した。さらに、南北どちらの脅威にも対応できるようにと中西部に配置された台湾軍の機動予備の南下を防ぐように、別のヘリボーン部隊が河川(八掌渓か)沿いに陣を敷く。
人民解放軍の攻撃は熾烈だった。70年前の古寧頭戦役の恨みを晴らさんばかりの猛攻で、高雄を防衛する台湾軍部隊を殲滅していく。なお、戦闘解決はオッズを用い、戦闘結果は両軍が失うステップ数。退却オプションはない。人民解放軍の主力は師団規模で4ステップを持ち、台湾軍は旅団規模で1ステップしか持たない。フルスタックの攻撃は問答無用で最高比となり、都市で守っていようと、台湾軍はスタック単位で蒸発していく。
これは後で気づいたことだが(遅い)、どうせ結果が同じなら、都市ヘクスはユニット1個で守り、地形効果による1ステップ・ロスを強要したほうが効率的だ。そして潰滅必至の反撃を行い、やはり1ステップ・ロスを強要する。「ウォー・イン・ザ・メガシティ」がいかにコストを伴うものか、最初から人民解放軍を教育してやるべきであった。
D+8日
着実に支配地域を広げていく人民解放軍に対し、機動打撃群に反撃命令が下る。敵軍ヘリボーン部隊を蹂躙し、台南及び高雄を救援せよ。
だが、70年前とは状況が違った。制空権がないために移動が困難となり、機動打撃群が戦線に達する前に、台南を占領した戦車師団が北上してきたのだ。数個ヘリボーン旅団を撃破して戦果にわいたのも束の間、精鋭戦車旅団群は人民解放軍の圧倒的火力の前にその存在をやめたのだった。
D+10日
高雄から台南にかけての市街地の支配を完了した人民解放軍は、勝利まであと都市ヘクス1つである。
この時点で台湾軍の勝利は辛いものとなっていたが、秘策がないわけではなかった。ヘリボーン旅団群による都市奪回作戦である。いくら物量に勝る人民解放軍と言っても、上陸後の戦闘で損耗しており、都市ヘクス全てをフルスタックで守りきれるものではない。地上から都市へ近づけないように戦線が張られているが、空中機動なら……そのためにはサイバー戦に勝利し、中国軍の航空優勢を排除しなければならない。最終ターンの手前でサイバー戦に勝利すればあるいは……。
取らぬ狸が皮算用をしているうちに、台北上空に無数の落下傘が開いた。控置していた空挺をこの終盤に投入してきたのだ。
「あと1ヘクス」を堅実に取りにいくのではなく、台北からごっそり奪おうというのである。倉上将恐るべし!
もちろん台湾軍は反撃に出るが、有効な打撃部隊は既に潰滅しているか、南部に出払っている。残るは予備役ばかりだ。
前述したとおり、オッズに関係なく市街戦は両軍にステップ・ロスを強要する。なるほど予備役の反撃で毎ターン、空挺師団は1ステップずつ失っていく。だが、残り時間との兼ね合いがある……3回の攻撃では3ステップしか奪えないので、空挺師団は潰滅を免れるのである。さりとて、まともなオッズを立てられるほどの部隊は残っていない(いても、最初の反撃で潰滅するだろう)。空挺師団を終盤まで残していた倉上将の深謀遠慮に、台湾軍は白旗をあげたのだった。
なお、戦後に空中機動旅団による反撃を企図していたことを告げたところ、中国軍も最後に残しておいたヘリボーン旅団で守備隊のいない東海岸の都市を狙っていたという。台北から空挺師団を排除できたとしても台湾軍の敗北は決まっていたようである。