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なぜボンサイ・ゲームズのゲームは5年で3回もCSR賞にノミネートされたか

※「5年で3回とかよっわ♥」「ノミネートだけで受章歴なしなんてかわいそ〜♥」「ざぁこ♥ざぁこ♥」と罵る前に、とりあえず最後まで読んでいただければと思います。

BANZAIマガジン第28号の特集は「このシミュゲがすごい!! 2026年版」ですが、今回は巻頭記事として「チャールズ・S・ロバーツ賞は出版社の売上げに貢献するか?」が掲載されます。本稿はブログ「A Fast Game is a Good Game」の「Feature: The Value Proposition of Wargaming Awards – the Publishers’ Perspective」翻訳版となります。読みたいでしょ? 読みたいよね。

ジョナサン・ダイアー氏は過去5年間、CSR賞にノミネートまたは受賞された作品を出版したパブリッシャーに片っ端から連絡し、ノミネートあるいは受賞が売上げに貢献したのかアンケートを行いました。詳細はリンク先を参照、または次号発売までお待ちください。本エントリの要旨はそこにあるのではなく、ジョナサンからアンケートのメールをもらって、ボンサイ・ゲームズがこれまで出してきた中の3作品がCSR賞にノミネートされたことに対して思ったことです。

脱線しますが、ジョナサンは英語で俳句を嗜んでおり、ブログに俳句のカテゴリがあるくらいです。

もう1回脱線しますが、『シベリアの俳句』(リンク先はAmazon)という本が出ていることを今ごろ知り、リトアニアの先生が来る前に履修しておけばよかったと後悔しています。

閑話休題。CSR賞にノミネートしてもらうためには、英語版が出版されるなり、最初から英語ルールブックを用意するなりして、英語圏のプレイヤーにプレイしてもらい、評価を得なければなりません。非英語圏のパブリッシャーには高いハードルです。ノミネートされた3作は、幸運にもその両方に合致するわけですが、ここで重要なのは──そして忘れられがちなのは、最初に翻訳してくれた方の存在です。誰かが面白そうだと思い、マイナー言語である日本語を英語に訳してくれ、プレイしてくれ、何らかの形で発信してくれたからこそ、海外の出版社の目にとまったのです。海のものとも山のものともつかぬ日本製ゲームに興味を持ってくれたファースト・ペンギンに感謝です。

そんなファースト・ペンギンのお一人はイタリアのNicolaさんであるのは間違いありません。

上のスレッドにあるように、『海運級太平洋戦争II』を無事入手されたので、海外で同作が楽しまれる日も近い? ルールブックのPDFファイル公開は「日本語ウォーゲーム」をプレイしてもらう上で重要です。

もうひとり、

Compagnia SNAFU つづくさんも積極的に英訳に取り組まれています。

『武士ライフ』のルールブックは公開されていないようですが、リクエストすればPDFファイルが出てくるのかもしれません。

こうした翻訳者の重要性について詳しく書かれているのが──ウォーゲームではなく日本文学ですが──鴻巣由希子の『なぜ日本文学は英米で人気があるのか』(ハヤカワ新書)。特に第4章「日本文学をプレゼンする出版社と翻訳家たち」に書かれていることは、そのまま文学をウォーゲームと読み替えても納得できる内容となっています。買って読もう。

「なぜ日本文学は英米で人気があるのか」、素晴らしい文学が日本にあるだけではなく(柚木麻子『BUTTER』や王谷晶『ババヤガの夜』が話題になりました)、翻訳され、英語圏で受け入れられる仕組みが整備されてきたのがその理由のひとつであると語られます。

少しだけ引用すると、「アメリカ文学にはすばらしい作品がたくさんあるが、世界中にはもっと多様な声と視点があり、英語圏の読者はそれに触れられずにいる」という、オープンレター・ブックスのディレクターの言葉。故に彼は、翻訳書の比率が出版全体の3%に過ぎなかった2000年代後半のアメリカで、翻訳出版社を設立しました。そうそう、日本に限らず、ヨーロッパにもアジアにも、「多様な声と視点」をもったウォーゲームがあるのですよ。それらの作品がより広く出回るようになれば、このホビーはより豊かになると思います。

そのためには本書で指摘されている「英語圏の悪習慣『翻訳者隠し』」を、国際ブッカー賞がやったように是正できれば。同賞では、受賞作の作家と翻訳者が賞金を山分けするのだそう。CSR賞も「外国語ゲーム部門」を創設して、英語圏にその作品を紹介した翻訳者もその栄誉に浴することができるようになれば……と夢想する次第です。

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