BANZAIマガジン第27号に掲載されている連載、「ユーロウォーゲームズ」はダニエラ・クシェル氏による「ウォーゲーム3作品に見る戦争観の違い」です。冒頭で次のように述べています:
「ゲームにおける戦争」の歴史を分析することは、「人間と戦争」に関する歴史を分析することであり、コンテクストや時代によって異なる戦争の概念を発見することでもある。モーリス・サックリングが論文「Board with Meaning」の中で述べているように、「ウォーゲームのデザインは、世界の仕組みを表現するものでもある」のだ。
鹿内靖氏より、本稿に関して感想をいただきました。
今回のユーロウォーゲームズの記事、非常に面白かった。まさにベン・マディソンの作品などは戦争全体と、戦争という側面からのみに限ったそれを取り巻く世界の仕組みを、デザイナーの視点で提供しているわけです。
『ナポレオン戦争ソリティア』(リンク先は直営ショップ。在庫ラスイチ!!)しかり、『カイザークリーク:第一次世界大戦ソリティア』しかりで、明確なデザイナーの視点を感じることができ、「それを強調する!?」という驚きや学びを得られます。それでいてプレイすると、全体としては我々がふんわり──もちろんその解像度は人によってそれぞれですが──理解している戦争の全体像が盤上に浮かび上がり、デザイナーがどうしてそのエピソードをチョイスしたのかを考えさせられ、勝敗はさておき、たいへん充実した時間を過ごすことができます。自分が石油王なら、彼のゲームを全部(リンク先はBoardGameGeekの作品リスト)日本語版で出してますね。

ということで『Global War』の日本語版を目下制作中です。戦後80年の節目に出したかったけれど、間に合いませんでした。「こういうコンポーネント・デザインでいく」と閃けば、さくっと進むと思うのですが。なお、この作品にも「それを入れるのかー!?」という要素が入っており、マディソン氏が再構築した世界の仕組みを楽しめる内容になっています。
話は最初に戻り、クシェル氏はスペイン内戦の大衆文化における表現について博士号を取得されています。スペイン内戦は来年が勃発から90年になりますが、2022年には「内戦とフランコ独裁政権の犠牲者の記憶を保持するための法律」(リンク先は国立国会図書館デジタルコレクション)が制定されるなど、内戦とその後の社会の在り方について疑問が投げかけられ、民主主義の記憶」法が制定されました(ただし保守派は、政権奪回後はこの法律を廃止すると主張)。これについてクシェル氏は、「『歴史的記憶の回復』という終わりのないプロセスにおける最新の画期的な出来事と捉えられる」と書いています。
記事には書かれていませんが、こうした歴史の再レビューとスペインにおけるウォーゲーム・パブリッシャーの隆盛に相関があるのか、気になるところです。
Comment