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ラッダ・ダンマルク作戦

1.0 はじめに

このゲームは作戦が決行される前にドイツが降伏したため、計画されただけで実行に移されなかったスウェーデンによるデンマーク奪還作戦をテーマにした2人用シミュレーションです。1人がスウェーデン軍(オランダ軍を含む)を、もう1人がドイツ軍を受け持ちます。

2.0 コンポーネント

マップとカウンター(駒)を使用します。また、戦闘を解決するため6面体ダイス1個を使用します。

2.1 マップ

全体を覆う6角形のマス目を「ヘクス」と呼びます。ゲームで使用中のユニットは常に1つのヘクス内に置きます。ヘクスが印刷されていない場所にユニットを移動させることはできません。

マップには、戦闘結果表とターン記録トラックも印刷されています。

2.2 カウンター(駒)

カウンターのうち、部隊を表すものを「ユニット」、ゲーム上の情報を表示・記録するためのものを「マーカー」と呼びます。ユニットには以下の情報が表示されています: 所属・兵科・部隊規模・部隊名・戦闘力・移動力

陣営: 地色で陣営を区別します。

  • 灰色: ドイツ軍
  • 青色: スウェーデン軍
  • 赤色: デンマーク軍

兵科: 歩兵のイラストが印刷されているユニットは「歩兵」、戦車のシルエットが印刷されているユニットは「機甲」、装甲車のシルエットが印刷されているユニットは「自動車化歩兵」です。

部隊規模: XXは師団、Xは旅団、IIは大隊規模であることを表しています。部隊規模の違いはゲームに影響しません。

部隊名: 史実における部隊の名称(部隊番号)です。略号の意味は次のとおりです。

  • DD: Den Danske(デン・ダンスク)=デンマーク軍
  • Moto: Motoriserade(モトリセラデ)=自動車化
  • Pansar(パンサル)=機甲

戦闘力: 戦闘解決時に使用します。ユニットの戦闘能力を表しています。

移動力: 1回の移動機会でユニットが使用できる移動ポイントの上限を表しています。移動力5のユニットは「自動車化」です。

オプション・ユニット: 「Opt」と記されているユニット(DD)は両プレイヤーが合意した時に使用してください。スウェーデン軍同様に扱います。

マーカー: 「GAME TURN」と記されたゲーム・ターン・マーカーがあります。左下のゲーム・ターン記録トラックに置いてゲームの進行状況を記録します。

3.0 ゲームの準備

スウェーデン軍プレイヤーは歩兵師団2個を矢印が印刷されたヘクスに1個ずつ配置します。その後、ドイツ軍プレイヤーはユニット7個全部を矢印が印刷されていないヘクスに自由に配置します。同じヘクスに複数のユニットを配置できます。

4.0 勝利条件

ゲームは第4ターンが終わると終了します。その時点でコペンハーゲンに自軍ユニットがいればスウェーデン軍プレイヤーの勝利です。またはゲーム中いつでも、南端灰色ヘクスに自軍ユニットが進入すればスウェーデン軍プレイヤーの勝利です。それ以外はドイツ軍プレイヤーの勝利です。

ラッダ・ダンマルク作戦の目的はコペンハーゲンの奪回でした。またこの作戦を支援するため、イギリス軍第51ハイランド師団が南から攻め込む予定でした。南端灰色ヘクスにスウェーデン軍ユニットが進入するような状況が生じると、ドイツ軍の戦線が崩壊し、直ちに第51師団が進出してコペンハーゲンを防衛していたドイツ軍部隊が抵抗を諦めるという想定です。

5.0 ターンの手順

各ゲーム・ターンはスウェーデン軍、ドイツ軍のプレイヤー・ターンを行います。また各プレイヤー・ターンは以下の手順(フェイズ)に分割されています。

スウェーデン軍プレイヤー・ターン

  1. 増援フェイズ
  2. 移動フェイズ
  3. 戦闘フェイズ
  4. 回復フェイズ

ドイツ軍プレイヤー・ターン

  1. 増援フェイズ
  2. 移動フェイズ
  3. 戦闘フェイズ
  4. 回復フェイズ

6.0 スタック

1つのヘクスに同時に複数の自軍ユニットを置くことを「スタック」と呼びます。敵味方のユニットがスタックすることはできません。スタック制限は各フェイズの終了時、または退却/戦闘後前進の終了時に適用します。

6.1 スウェーデン軍のスタック制限

スウェーデン軍はスタックできません。

師団規模・旅団規模に関係なくスタックできないのは、コマンド・コントロール上の制限を表しています。

6.2 ドイツ軍のスタック制限

ドイツ軍にスタック制限はありません。1つのヘクスに何個でもユニットをスタックさせることができます。

7.0 支配地域

ユニットは隣接する6ヘクスに支配地域(ZOC)を及ぼします。敵のZOCを「EZOC」と表記します。混乱したユニットはZOCを失います。

例外: 2戦闘力以下のユニットはZOCを及ぼしません。ドイツ軍の場合、合計2戦力以下のヘクスはZOCを及ぼしません。

例外: 海で隔てられているヘクスにZOCは及びません。

8.0 増援

増援とはゲームが始まった後で登場するユニットのことです。

8.1 スウェーデン軍の増援

スウェーデン軍は第2ターンと第3ターンに1個ずつ、初期配置しなかった戦車旅団及び自動車化歩兵旅団を矢印が印刷されたヘクスにスタック制限内で配置します。選択ルールを使用している場合、オランダ旅団を加え、第4ターンまで毎ターン1個ずつ増援が登場します。

8.2 ドイツ軍の増援

ドイツ軍に増援はありませんが、前ターンに戦闘で壊滅したユニットがいれば、その全てをホルベックに配置します。

ドイツ軍の増援は、敗残兵を再編成した部隊の他、南方の戦線から引き抜いた部隊を表しています。

9.0 移動

プレイヤーは自軍移動フェイズ中に全てまたは一部の混乱していない自軍ユニットを移動させることができます。各ユニットは移動力の範囲内で移動できます。移動力を使い切る必要はありませんが、未使用の移動力を次のターンに繰り越したり、他のユニットに譲渡したりすることはできません。

  • 1ヘクス移動するのに1移動ポイントを消費します。
  • ヘクスが印刷されていない場所へ移動することはできません。また海ヘクスサイドを越えることはできません。
  • 敵ユニットがいるヘクスには進入できません。
  • 移動中、EZOCに進入するとそこで停止しなければなりません。移動開始時にEZOCにいるユニットはEZOC以外のヘクスへ移動できます。その後、EZOCに進入することはできますが、EZOCからEZOCへ直接移動することはできません。
  • ドイツ軍ユニットは矢印が印刷されているヘクスに進入できません。

10.0 戦闘

プレイヤーは自軍戦闘フェイズ中に混乱していない自軍ユニットを用いて隣接する敵ユニットを攻撃できます。攻撃は任意であり強制はされません。

10.1 戦闘の基本ルール

  • 自軍戦闘フェイズを行っているプレイヤーを「攻撃側」、相手を「防御側」と呼びます。
  • 攻撃側の各ユニットは1回の戦闘フェイズ中に1回だけ攻撃できます。防御側の各ユニットは1回だけ攻撃を受けます。
  • 攻撃側はどの自軍ユニットでどの敵ユニットを攻撃するのか宣言し、その組み合わせを解決します。戦闘解決後、次の組み合わせを決めて戦闘を解決します。戦闘フェイズ開始時に事前に全ての組み合わせを宣言する必要はありません。
  • 1回の戦闘で同時に複数の防御側ヘクスを攻撃することはできません。同じ防御側ヘクスに隣接している複数の攻撃側ヘクスから、同時に(共同で)その防御側ヘクスを攻撃できます。
  • スタックしているドイツ軍ユニットは1個のユニットとして扱います。ユニットごと別々のヘクスを攻撃することはできず、攻撃を受けた時はスタック全てのユニットが防御しなければなりません。
  • 海ヘクスサイド越しに攻撃することはできません。
  • 戦闘比(10.2)が1:2以下の戦闘は行えません。ドイツ軍の航空優勢(10.6)によって1:2になった時は、戦闘結果は「-」になります。

10.2 戦闘の解決方法

各戦闘は以下の手順で解決します。

  1. 攻撃側はどの自軍ユニットでどの防御側ヘクスを攻撃するのか宣言します。
  2. 攻撃を行うユニットの戦闘力を合計します。攻撃側戦闘力:防御側戦闘力の比率(戦闘比)を計算し、端数を切り捨てして戦闘結果表にあるような単純な戦闘比にします。例: スウェーデン軍の歩兵師団2個(計8戦闘力)でドイツ軍ユニット3個のスタック(3戦闘力)を攻撃します。戦闘力の比率は8:3で2.67:1になります。端数を切り捨てして戦闘比は2:1です。
  3. 防御側が都市(コペンハーゲン)にいたら、戦闘結果表で使用するコラムが左に1シフトします。例: 戦闘比2:1でコペンハーゲンを攻撃した場合、戦闘比は1:1に修整されます。
  4. 攻撃側はダイスを1個振り、出た目と戦闘比のコラムが交差するところを調べます。そこに記されている記号が戦闘結果です。
  5. 戦闘結果を適用したら戦闘は終了します。必要に応じて次の戦闘を解決します。

10.3 戦闘結果

  • Ar: 攻撃側全ユニット1ヘクス退却。
  • -: 効果なし。
  • -/Dr: スウェーデン軍攻撃時なら「-」、ドイツ軍攻撃時なら「Dr」。
  • Dr: 防御側全ユニット1ヘクス退却。
  • De: 防御側全ユニット除去。

例外: 矢印ヘクスにいるスウェーデン軍が退却の結果を被った場合、攻撃時・防御時を問わず退却を無視できます。

10.4 退却

Ar、Drとも退却は攻撃側が行います。ユニット1個ずつ任意の順番で退却させます。以下のヘクスには退却できません。

  • 敵ユニットがいるヘクス。
  • EZOC。ただしそのヘクスに自軍ユニットがいれば通過可能。
  • スタック制限に違反するヘクスで退却を終えることはできません。その場合は1ヘクス追加で退却します。
  • 海ヘクスサイドを越える退却。
  • マップ外への退却。

退却したユニットは混乱します。ユニットを裏返してそのことを表示します。

10.5 戦闘後前進

防御側が退却または除去されたら攻撃側はそのヘクスへ戦闘後前進できます。自動車化ユニットはさらに1ヘクス、EZOCを無視して前進できます。

10.6 ドイツ軍の特別ルール

ドイツ軍の限定的航空優勢: ゲーム中1回だけ、攻撃または防御時にドイツ軍プレイヤーは1回の戦闘で戦闘比を自軍に有利に1シフトできます。

スウェーデン空軍は約580機を保有しており、制空権を得るものと考えられますが、ドイツ軍機に比べて旧式であり、予備も少ないことから、ドイツ軍は限定的ながら航空優勢を得ることが可能でした。

ドイツ軍の戦術的優位: 都市(コペンハーゲン)にいるドイツ軍ユニットは攻撃時・退却時を問わずユニット1個を除去することで「r」の結果を無視できます。

11.0 回復

自軍回復フェイズに混乱している自軍ユニットを表面に戻します。EZOCにいても回復可能です。

混乱状態のユニットは移動・戦闘を行えず、混乱している間はZOCを失います。

12.0 ヒストリカル・ノート

12.1 第二次世界大戦とデンマーク

1940年4月にドイツはデンマークを征服した後、同地に大規模な守備隊を──ただしノルウェイなどと違って非野戦軍を駐屯させた。回復が必要な大損害を受けた部隊、あるいは訓練を行う予備部隊がデンマークに一時的に配備された。その中でも第416歩兵師団は「訳あり」部隊だった。胃腸障害の年寄りで編成された師団であり、デンマークでは特別な食事メニューを用意された(そのためデンマークのことを「ホイップ・クリーム戦線」と呼んだ)。

戦局の悪化に伴い、ノルウェイとデンマークからは第416師団を含む野戦師団が引き抜かれ、デンマークには戦闘・訓練・占領部隊が残された。その主な部隊、第233予備装甲師団、第160及び166予備歩兵師団は、訓練・補充部隊であった。ほとんどの兵員は若すぎる(16-18歳)か年を取り過ぎていた(30-40代後半)。これらの部隊はユトランド半島に置かれ、コペンハーゲンとシェラン島の守りは、島を囲む海岸砲台と回復期にある兵士で編成された大隊に任された。シェラン島の総兵力は28,000名程度だったが、後方勤務の者が多くを占めていた。

海上戦力はコペンハーゲンに集中しており、〈プリンツ・オイゲン〉と〈ニュルンベルク〉、駆逐艦4隻などがあった。コペンハーゲン守備隊の主要な任務はこれら艦船を防衛することであり、また工兵は港湾施設爆破の準備も進めていた。

ドイツ空軍はデンマークから引き抜かれており、守備隊は航空支援を全く受けられないか、受けられたとしても極めて限られていた。

12.2 ラッダ・ダンマルク作戦

スウェーデンとシェラン島とは、一番狭い場所で約5 km、一番離れているコペンハーゲンとで約15 kmの距離があった。スウェーデンには上陸艇がなかったので、1,158隻の漁船で侵攻部隊を輸送する計画を立てた。

海峡の最も狭い地点に攻撃を集中することになっていた──スウェーデン側からの砲撃支援の下、第1波6,000名が上陸する。その後、兵力を60,000まで増強してコペンハーゲンに向かう。1個連隊がボーンホルム島に上陸する。同島の守備隊は14,000名いたが、そのほとんどは後方勤務の人員だった。

作戦を実行するのは3個ある軍団司令部の1つで、2個歩兵師団、1個機甲旅団、1個自動車化歩兵旅団とデンマーク旅団が主力である。

スウェーデン海軍はほぼ総力が参加し、海防戦艦7隻(4隻は旧式)、巡洋艦4隻、駆逐艦20隻以上、潜水艦20隻、掃海艇42隻、哨戒艇30隻が投じられる。ヘルシングエーアとコペンハーゲンからのドイツ海軍出撃を阻止するための閉塞船2隻も用意された。

スウェーデン空軍は一線級の機体約580機を用意したが、予備はなく、ドイツ軍の新鋭機に比べると性能面で見劣りがした。

侵攻は1945年5月18日に予定された。

12.3 もし計画が実行されていたら?

1945年5月7日にドイツは降伏し、作戦は中止となった。デン・ダンスク旅団はヘルシングエーアに上陸すると、その日の午後9時に1個大隊がコペンハーゲンに入った。同じ頃、同市南方に降下したイギリス軍第8空挺大隊も合流。その他のイギリス軍部隊も急進し、ドイツ軍によるインフラ破壊を阻止した。

デンマークには約25万のドイツ兵がいたが、大人しく武装解除に応じると、急いで本国へと逃げ帰った。厄介だったのはソ連軍に追われて東プロイセンから逃れてきた238,000人の避難民である。1946年末まで帰還事業が続いたのだった。

ラッダ・ダンマルク作戦が行われていたら成功を収めただろうか? 第一波上陸はほとんど抵抗を受けることがなかっただろう。上陸船団の性質上、戦闘よりも管理上の障害が大きかったと思われる。また、何もないところから効果的な戦闘グループをつくり出すドイツ軍の能力は過小評価できないだろう。スウェーデン軍が数では圧倒していても、際どい戦いが展開されたかもしれない。

参考文献: Vernie Liebl, Den Danske Leads the Way, Swedish Invasion of Denmark, 1945. World at War #62, Decision Games.