ソリティア花盛りですね。米国の兄貴、War Diary Publicationsからおひとりさまウォーゲーム『Battle of the Bismarck Sea』(以下BBS)が発売されました(リンク先は公式サイト)。兄貴もほぼ同時期に『コルベット・コマンド』をリリースしていますが、同じデザイナーの『Nightfighter Command』も出されています。

本作のデザイナーはアリン・ヴァノイ氏(リンク先はBGG)。昨年から活動を開始されたのでしょうか、Decision Gamesからは『Solomons Campaign 1942-43』(以下SC)が、VUCA Simulationsからは『Traces of Victory』が出版されており、どちらもなかなか高評価。SCはグリッド式のマップを使っており、BBSのマップにもグリッドが見られますが、「ビスマルク海」を定義するためだけに使用するだけで、航空機の航続距離やPTボートの作戦範囲は緑色の太線で示されており、それらの移動にはグリッドを使用しません。また日本軍の船団は6本の航路を使用し、やはりグリッドは使用しません。
ゲームは1943年1月(ラエへの輸送作戦が一応の成功を収めた)から3月(ダンピールの悲劇)における、日本軍によるニューギニア東部増援作戦をテーマとしており、プレイヤーは第5空軍司令官として、その阻止を目指します。勝利条件は日本軍がどれだけの地上部隊(第51師団)をラエへ輸送できたかで判定されます。
1ゲーム・ターンは1週間に相当し、指揮/支援(以下CS)シークエンスと作戦シークエンスに分かれます。CSシークエンスでは、日本軍の船団出港判定を行い、連合軍はリソース・ポイント(RP)と増援を受け取って航空隊の整備を行います。日本軍の船団が出港すれば作戦シークエンスへ移行し、1ターン=3時間のスケールで約2日間の戦闘を行います。船団は毎ターン出港するとは限らず、出てこなければ作戦シークエンスを飛ばして次のゲーム・ターンに進みます。
日本軍の行動は、(1)船団の移動(目的地はラエのみ)と(2)陸軍機または海軍機による船団の上空直掩(CAP)だけなので、ゲーム・システムによる制御が容易です。これに対しプレイヤーは、(1)偵察と追尾、航空攻撃と、(2)飛行場制圧で対抗します。また作戦範囲は限られていますがPTボートも使用可能で、ラエに最接近したところで船団を襲撃できます。
偵察は偵察機または重爆撃機で実行可能で、船団──マーカーが全部で6つあり、そのうち本物は1つ──を発見すれば、重爆撃機なら爆弾を投下し(まず当たりません)、偵察機は追尾し、中型爆撃機を船団まで誘導します。船団には自動的にCAPがつくので、その戦闘機を減じるために飛行場制圧が有効になります。なお、航続距離が短いP-40はこの任務しか行えません。

戦闘解決は(そんな呼称があるかは知りませんが)ダイス・ファイアパワー。1d6を振って出た目が戦闘力以下なら敵に1ヒットを与え、1ヒットにつき1ステップを失うというもの。射撃は同時ではなく、先制射撃側を決めて交互に行います。
船団を攻撃するときは「船団ディスプレイ」に輸送船と護衛の駆逐艦を並べ、攻撃する中型爆撃機を目標に向けて配置し、対空射撃と対艦攻撃を行います。

艦船は3ステップを持ち、1ヒット目で損傷、2ヒット目で航行不能、3ヒット目で沈没します。ユニット左下は速力(ノット!!)で、1時間に移動できる距離(海里)。船団航路のドットは15海里単位(ルールブックの7.5海里という表記は誤り)で、1ターン=3時間なので速力15ノットの輸送船なら3ドット分移動できます。15ノットを維持できれば難なくラエに到達できますが、損傷して速力が半減すると、船団として時間内にラエに到達するのが困難となり、航空攻撃を受ける頻度も高まります。
日本軍の船団は損傷艦とともに移動するのか、それとも無傷の輸送船だけで先を急ぐのか? こうした作戦方針の転換はイベント・チットで表され、損傷した艦船だけで第2の船団を編成する、あるいは単独で船団から分離する、といった分岐が発生します。またラバウルから予備の駆逐艦が駆けつけ、航行不能に陥った輸送船から兵員を救出する/船団内の駆逐艦だけでラエへ向かう、といったヴァリエーションもあります。
ビスマルク海海戦(ダンピールの悲劇)だけではなく、約3カ月のキャンペーンにすることで、プレイヤーに作戦レベルと戦術レベル、両方の選択肢が与えられており──例えば航空隊の練成と整備を優先するために船団迎撃を1回行わない、あるいはラエ飛行場に対する航空撃滅戦を優先するなど──、その意味で美しいソリティア・ウォーゲームと言えます。一方、ルールが未整理であったり、歴史的に違和感を覚える点があったり(日本軍はラエにだけ輸送したわけではない、日本軍戦闘機の補充能力が高すぎる、など)、もう少しユーザー・フレンドリーなインターフェイスにできたのではないかと感じられたり、「しっかりしてくれ、兄貴」と心の中で叫んだのも事実です。
本作のように対戦ゲームにはしにくいテーマや切り取り方であってもソリティアなら成立します。このジャンルはまだまだ開拓の余地がありそうです。
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