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『2022: Ukraine』に関する覚書

週末に『2022: Ukraine』を動かしてみました。以下はその覚書です。

「ボンサイ・ゲームズと関係ないじゃない」と言われそうですが、CSLとは良好な関係を築いておりますし、そして何より本作のデザイナーズ・ノートがBANZAIマガジン第19号に掲載されます。関係、大ありなのです。

週末にTwitter(現X)に投稿したスレッドは以下のとおりです。

「今の時点でウクライナ戦争をゲーム化して、シミュレーションとして正しいものになるはずがない」という意見を頂戴しました。これには(1)資料的な怪しさと(2)終わっていない戦争の1年目だけを切り出して、果たして(完結した)ウクライナ戦争のナラティブに沿うものになるのか、という2つの問題が含まれています。(1)に関してはデザイナーのレイ・ワイス氏自身が記しているように、戦闘序列に間違いがある可能性があり、今後、新たな情報を入手すればレーティングの見直しも必要になるでしょう。

(2)は確かにそのとおりではあるのですが、今でなければ描けないことがあるのも事実でしょう。ウクライナ戦争が「歴史」になった後での1年目の戦いに関する評価と、今の評価とでは、恐らく異なったものになります。歴史になった後の文脈には沿わないかもしれませんが、開戦1年後に西側のデザイナーがこの戦争をどう見ていたのか、を知ることは(そしてボードゲームというメディアに残したことは)、何らかの意味があると思えます。

フォークランド紛争直後に出版されたメイフェアの『ウォー・イン・ザ・フォークランズ』(1982)はかなりおっちょこちょいな作品だったようですが(BGGのレーティング=1点: 史上最悪のウォーゲームだ。歴史的な詳細も、実際の出来事との関連性も、全くない)、本作はそこまで拙速な出来という印象は受けませんでした。

ちなみに『ウォー・イン・ザ・フォークランズ』は倫理の面でも批判にさらされました

1982年、メイフェアは戦争終結と同時に『ウォー・イン・ザ・フォークランズ』を発売。英紙はこれを「悪趣味な」搾取だと非難した。

『2022: Ukraine』は今の時点でそのような話は聞きません──プロジェクトを発表した時点で、SNS上でデザイナーに批判が浴びせられたことを除いて。繰り返しになりますが、レイを含む多くのウォーゲーム・デザイナーが主張しているように、ゲームはメディアのひとつに過ぎず、他のメディアが倫理的に許されることがゲームにだけ適用されないというのは道理が通らないでしょう。

本作ではユニットの戦闘力はチットを引いて決める。チットは毎ターン更新されるので、最強なあるいは最弱チットを引きずることはない。

ルールに関する覚書

  • セットアップは、ロシア軍鉄道終端マーカーの配置> ウクライナ軍ユニットの配置> ロシア軍ユニットの配置、とすると良いでしょう。配置場所の指定がないロシア軍ユニットは、軍(同一グループ)単位で任意の軍管区に配置可能とします。「第1ターンは全てのロシア軍ユニットが自動的に連絡線を引ける」というルールがないため、鉄道終端マーカーの位置、並びにウクライナ軍ユニットの位置はかなり重要になります。
  • ウクライナ軍に初期配置制限がないのは不自然と感じられる場合、両軍とも戦闘時の支援対象になるのは同一軍所属ユニットのみ、にすると良いかもしれません。あるいは、同一軍所属でないと包囲していても支援修整は通常の+1に制限される、など。
  • ウクライナ軍のZOCは国外には及ばないものとします(2014年にロシアに併合された地域には及びます)。ウクライナ軍ユニット(空軍を含む)は国外で移動・戦闘を行えません。これによりベラルーシに配備されたロシア軍ユニットは戦略移動で東方に配置転換できます(相当時間がかかりますが)。
  • マップ上、ロシア国境直前で思わせぶりに行き止まっている鉄道線がありますが、マップに描かれているとおり、ロシアには通じていないものとします。
  • 戦闘チットの平均値(中央値に非ず)は下の表を参考にしてください。
裏面表面裏面
A6.475.96
B5.10(-1.37)5.41(-0.55)
C3.53(-1.57)3.78(-1.63)
D1.98(-1.55)1.94(-1.84)
( )内は1つ上の練度との戦闘力差
  • 戦闘チットの表面/裏面はランダムに選ぶことになっており、これまでのCSL製品はPODだったので問題なかったのですが(レーザー抜きのため触った感触で表裏を判別しづらい)、現在はトムソン加工のため、触れば抜き方向がわかります。練度AかDなら表面を選んだほうがいいし、BかCなら裏面を選んだほうが得です。今回は、奇数ターンは両軍とも表面を、偶数ターンは裏面を使うことにしましたが、いっそカップから戦闘チットを落として上になった面を使う、とかにしても良いかもしれません。

本作(PCSシステム)の戦闘では、要素によって戦闘力ではなく練度を修整します。練度Aなら表面が得、と書いたばかりですが、例えば敵が空軍力を使って連絡線を断つなどして練度が下がる可能性があるなら、裏面を選んだほうが無難かもしれません。そして戦闘支援アセットは戦闘チットを引いた後で割り当てるので、戦闘チットの表裏は任意で選んでも、懸念するほど大きな影響は出ないかもしれないし、むしろ駆け引きが生じてより味わい深いものになるのではないでしょうか。

ああ、最後になりましたが、『2022: Ukraine』はレイ・ワイス氏デザインでCSLから発売中、『Ukraine 2022』はマーク・ハーマン氏が絶賛デザイン中です。似て非なるものです。

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